2014年8月1日に取り急ぎUPした
EWI5000、ファーストインプレッション・リポート の続編です。
その後、さらに音色Editorで細かく調整し、単なる音色比べではなく、メロディを演奏してみるうちに、EWI4000Sのほうが粘り気のある演奏で表現力が勝っているのではないか? という気になってきました。
本当にそうなのか?
同じメロディを3つの音源で吹き比べてみました。
曲は『Escape from Spring』です。
EWI5000(07番を若干カスタマイズ)
EWI4000S(16番を若干カスタマイズ)
AriaのViolin(TH)(入力はEWI5000)
の3つです。
EWI5000
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EWI5000の07番(Soprano Sax)を少しカスタマイズした音源で吹いています。
EWI5000では、ベンドをやると不自然になることが多いのと、音の減衰がブツ切れになりやすいので、その点、慣れないとEWI4000Sより難しいとも感じます。
EWI4000S
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EWI4000Sで、いつも使っている音色(16番を少しカスタマイズ)で吹いています。
アナログシンセサイザーを模している音源だけに、ベンドの表現はこちらのほうが自然というか、独特の味が出やすく、「EWIっぽい」感じではないかと思います。
音の減衰も丸みがあるというか、す~っと消えてくれます。
悩ましいところですが、ライブではやはりEWI5000より4000のほうがEWIらしさが出てアピールできるのかなというのが、今の段階での印象です。
AriaのViolin(TH)
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これが私が常用するようになったAriaのViolinです。入力にはEWI5000を使いました。
この音源は、ベンドを使っても胡弓のような味が出て、生のヴァイオリンとは違う世界が演出できると感じています。
EWI5000がこれを内蔵してくれたら……。
5000はとにかく動作が不安定で、怖いです。また、これが改善されたとしても、ライブにEWI5000を使うかEWI4000Sを使うかは悩むところです。
安定性の点だけでなく、EWIらしさを主張しやすいという点でも、やはりEWI4000Sでいくという人が増えるのではないでしょうか。
特に、サックスプレイヤーがEWI5000でサックス音源を演奏する意味があるとはどうしても思えません。それなら普通にサックスを吹いたほうがずっといいわけですから。
私のようにEWIしか吹けませんというEWI吹きはどうするか……。
管楽器奏者がいないセッションならEWI5000もありかなと思いますが、その場合もなんだか「代用品」という印象を与えてしまいそうな気がします。
では、EWI4000Sなら「代用品」の印象を与えないかと言えば、そうでもないのでしょうが。
結局、エディットしてレゾナンスを強調するなどして、生の管楽器らしくない音にして、バリバリで行く、という人が多くなる気もします。
ディレイでもかなり派手目の音に変わります。
フュージョン系のバンドであればそういう感じになっていくのかな……。
現状では、そういうタイプのEWI吹きが多数派でしょうから。
やはり、
EWI5000は音源を入れ替えられる画期的なウィンドシンセサイザーとして活路を開いていくしかない のではないでしょうか。それならどんな趣向の人も幸せになれますし、一気に「楽器」としての価値も上がります。
メモリ容量目一杯を使って数種類に絞った高品位で安定した音源を供給する……。そういうことができる構造で作ってあるのかどうか分かりませんが、それしかないと思います。
あとは現発売元(アメリカのベンチャー企業 inMusic社)がそれをどこまで理解できるか、同意できるか、その気概があるか、でしょう。
ほとんど期待できないので、いっそ、
カスタムカー製作ガレージみたいなショップが登場して、中身を入れ替えた改造EWIを販売するとかしてくれないか なあ。……それも望み薄か……。
最後に、『Escape from Spring 』の完成版、冒頭のテーマをEWI5000で入れ替えてみました。さわりをどうぞ↓
『Escape from Spring』(Jin Soda) より(クリックでMP3再生)
……テーマはEWI5000のSoprano Sax2。続くアドリブの最初はEWI4000Sの16番(Mix Lead)。それを受けてAriaのViorin(TH)
『Escape from Spring』(Jin Soda) より(クリックでMP3再生)
……音源ソフトAriaのヴァイオリンで始まり、次にEWI4000Sの16番(Mix Lead)とユニゾン演奏
『Escape from Spring』(Jin Soda) より(クリックでMP3再生)
……曲の最後の部分、EWI4000Sの16番とAriaのヴァイオリン音源でのアドリブの応酬
追記:予備のEWI4000SWを買っておく必要があるかもしれない?
(2014年8月8日追記)
その後、いろいろやってみたのですが、私としてはどうしてもEWI5000を吹いているときにEWI4000Sのような手応え、気持ちよさを感じられません。
音色エディットがもともと下手なのでカスタマイズが足りないのだと思いますが、今はもう、EWI4000S以上の音が出せる気がしなくて、せめてEWI4000Sで常用している音色と同等の音色をEWI5000で作れないか……という悲しい努力になりつつあります。
ハードウェアとしては、軽くて無線が内蔵されているEWI5000のほうがライブ向きであることは間違いないのですが、音の粘りが違いすぎるので、重くても、いちいち無線装置を外装しなければならなくても、EWI4000Sをこれからもライブでは使い続けようと思っています。
そうなると不安なのは、EWI5000が出たことによりEWI4000S(W)が製造中止となり、新品で入手することができなくなるのではないか、ということです。
4000S(W)の中古や在庫品がプレミアム価格で売られるようになることもありえそうです。
実際、並行輸入品のEWI4000Sは私が入手した2年前にくらべて値上がりしていますし、EWI4000SWの価格も、EWI5000が出た直後に一気に下がりましたが、このへんで下げ止まり、今後、値上がりしていくかもしれません。
であれば、今(これを書いている2014年8月時点)がEWI4000SWの買い時かも……。また、初めてEWIを手にしようという人にも、EWI5000より4000SWのほうがいいかもしれません。
まあ、無理してEWI5000を購入した私には、予備にEWI4000SWをもう1本購入する余裕もなく……不安を抱えながら状勢を見守るだけですが……。
いずれにせよ、EWI5000が劇的なバージョンアップを遂げるということは期待しないほうが精神衛生上よさそうなので、私は、現状のEWI環境でいかに「デジタル・ワビサビ」を推し進めていけるか、じっくりあがき続けてみようと思っています。
ライブでは今まで通りEWI4000S(+無線キット)
録音ではEWI5000をMIDI入力機にしてAriaのViolin(TH)音源を使った作品を増やしていく
……そんな感じです。
↑EWI4000SWの価格推移(価格コム より)
(2014年8月16日追記)
その後、どうしても割り切れず、さらにEWI5000のエディットをしてみました。
ひとつの考え方としては、ライブでサックスのシミュレーション音源を吹いても惨めなだけだから、いっそ生楽器っぽさを打ち消すほど派手にエディットして、以前のEWIらしさを回復させたらどうか……と。
それでも元の音が淡泊なので、EWI4000Sのような粘りはなかなかつきません。ディレイなどを駆使して、なんとか音色を太くさせるとライブでもあんまり惨めにならないかな……という感じでしょうか。
それでも、遊びのセッションなら5000でもいいけど、本気のライブでは4000S(W)を選ぶ……かなあ……?
(2014年8月18~19日追記)
前のページに追記で書きましたが、どうやら私が手にしたEWI5000は不良品だったようです。
届いて半月で(8月16日の夜)完全に壊れ(電源が入らなくなり、一切の操作を受け付けず)、即、購入元のアマゾンに手続きして交換してもらったのですが、2台目は1台目とは別物の楽器かと思うくらい音がしっかりしていて、デジタルノイズなどもほとんど出ません(まだ届いたばかりなので油断できませんが……)。
これであれば、なんとかEditしてライブに使えそうかな、と気持ちを持ち直しているところです。
結局、4000のアナログシンセをシミュレートした粘りのある音と5000のデジタルデジタルしたクリアな音とどちらが好みか……という問題になるのでしょう。ユーザー全体では、5000の音のほうが断然いいじゃん、と言う人が多いような気もします。
5000の後半に入っているシンセ系の音色はどれもいただけないので、こんなのをいっぱい入れるくらいなら、4000の音をシミュレートした音色をしっかり1つ2つでいいから入れてくれればよかったのになあ。
「4000と同じ音も出ます」ということになれば、悩む必要はまったくないのですから。
(2014年8月19日追記)
それと、EWI5000の音色は読み込む時間にかなり差があります。「○○Section」と名づけられた音源は単体の音色(Alt Sax などの)より読み込みに時間がかかるため、音色切り替えをしたときにすぐに切り替わらなかったり、その後、すぐに吹くと音が途切れたりしやすいようです。
それだけメモリを食う音色でありながら「○○Section」はどれもチープな印象の音なので、こんなものは最初から入れなければよかったのにと思います。
また、CPUとメモリのバランスが悪く、少し大きめのメモリ食い音色を読み込んだときの再生能力がいっぱいいっぱいという印象。音色数をもっと減らして(厳選してクオリティを上げ)、CPUはもっと高性能なものを搭載すべきでしたね。
どうも、EWI5000開発者たちは、EWIは単なる音源集ではなく、ミュージシャンが真剣につき合い、自分の身体と一体感を得るために努力する
「楽器」 なのだということが理解できていないように思います。
単に音色を100個用意したシンセサイザーモジュールに吹き口付きMIDIトリガーをくっつけた電子製品くらいにしか考えていないのでは?
まあ、こうして文句を言っていてもおそらく改善は期待できそうもないので、あとはこちらが現状の(与えられた)EWIをとことん愛して、いい音楽を作っていく……その覚悟を持てるかどうかですね。
もともとEWIを使ってワビサビだなどとほざくこと自体、大多数の音楽ファン、ミュージシャンたちからすれば「邪道」「勘違い野郎」なわけで、茨の道は覚悟の上でつき合っていくわけですから。
(2018/11/17 追記)
EWI4000SWはその後製造終了になっているようです。AmazonではまたEWI4000Sが新品で売られていたりします。
私のEWI4000S押しは今も変わりません。
EWI5000は完全にUSB接続でのMIDI入力専用(レコーディング専用)になりました。急に音が出なくなるなどのトラブルが不安なので、外で5000を吹くことは一切なくなりました。
ライブ演奏時の表現力も、4000Sのほうが勝っていると思います。
(2021年3月9日)
開発者には悪いですが、EWI5000というモデルは完全な失敗作だったと思っています。
EWI-SOLOには期待していますが、なにせまだ品物が入手できないので……(苦笑)。
4000Sと4000SWも新品ではもう入手不能なので、今手元にある4000Sと一生つき合うことになりそうです。