ローランドがウィンドシンセサイザーを出したことは知っていましたが、最初にあの形状を見たときから「これはダメだな」「あまりにも玩具っぽくて、触手が伸びないな」と感じて、黙殺していました。
しかし、小型のAE-05が出て、少し気持ちが動き始めます。
やはり本体だけで音が出せるのは魅力だし、なにより小さくて軽いのがいい。コンサートやレコーディングには使えないけれど、老人ホームの慰問や、旅行のときに車の助手席で吹くような使い方なら魅力的ではないか、と。
で、WEBにUPされている動画をチェックしましたが、どれもライン出力をそのまま録音した音のようで、本体から直接出ている音ではなさそうです。
ようやく見つけたのが
⇒これ。
う~~ん、ショボい。でも、これはデジカメでサッと撮っただけだろうから、実際にはもう少しマシな音なのでは? と、甘い考えを持ち、悩んだ末にポチしてしまったのでした。
5万円オーバーは痛いです。失敗したら立ち直れません。
しかし、予想以上に失敗でした。
音のショボさもさることながら、私にとってはEWIにくらべて操作性が悪すぎる。オクターブキーやベンドキーがただのボタンで、しかも押しづらい位置にある。
音階キーを押すたびにカチャカチャ音がして、それだけでも演奏にのめり込めない。
要するに、「楽しくない」楽器でした。……私には。
サックス経験者の練習用?
もちろん、この楽器が向いている人はいっぱいいると思います。
サックス奏者や吹奏楽器経験者には、EWIのようなタッチセンサー方式は指を完全に離さないと音が変わらないのがどうしても許せないので、エアロフォンのようなボタン方式のほうがはるかに馴染めるようです。
小学校のリコーダーしか触っていないという初心者(実は私も55歳でEWIを手にしたときはそうでした。管楽器の経験ゼロです)でも、EWIよりずっと取っつきやすいかもしれません。
本体のショボい音も、「室内ででかい音が出せない練習用だからこれでいい」という人がいます。ヘッドフォンをつければ音も問題ないわけだし……と。
サックスの室内練習器としては重宝する……なるほど、それはそうかもしれません。
本体スピーカーから出る音はショボいですが、内蔵音源の質そのものはかなりよくて、LINE出力すれば、ステージでも使えるくらいのクオリティを持っています。(パーカッションは絶対に不要ですが……)
特にヴァイオリン音源は羨ましい。これがEWIに内蔵されていたらどれだけ魅力が倍増することか……。
ただ、ローランドは管楽器経験者だけが対象ではなく、管楽器をやったことのない人たちに広くこの楽器を売りたいのだと思います。広告を見てもそんな感じだし……。
であれば、かつて存在したカシオのデジタルホーンDH-500のほうがずっと魅力的な楽器でした。音もAE-05よりはずっとふくよかでしたし、キーもこんなにカチャカチャいわなかったような気がします。
私はDH-500でしばらく遊んでいた時期があり、そのときのイメージが残っているので、ローランドAE-05はカシオDH-500の進化版になっているのでは? と期待したのですが、それは完全に裏切られました。
要するに
エアロフォンは設計思想が中途半端なのではないでしょうか?
外部スピーカーを使うことを前提にプロ用の楽器を作りたいなら、もっとキータッチや配列などに気を使うべきだし、単体で気軽に楽しめる楽器として広く売りたいのなら、何よりも内蔵のアンプとスピーカーの質・構造を重視した作りにすべきでしょう。スピーカーの裏側にロードホーンを設けて音を膨らませるとか……。
このままだとどっちつかずの楽器として埋もれていく気がします。
そもそも、ヤマハのWXやカシオデジタルホーンが消えていった理由はなんだったのか? そのへんをシビアに考え直す必要がある気がします。
ローランドがウィンドシンセサイザーを開発してくれたことはとても評価していますし、応援もしています。でも、今のままだと、サックス経験者など、管楽器を知り尽くしている人がこの製品の内容を理解した上で買う、ということ以外にはあまり用途が想像できません。
私のようなまったくの管楽器未経験者が「これならできそう」と気軽に手を出すのはどうなのでしょう……。
というわけで、後は↑このリポート動画を見て判断してください。
届いた初日に、箱から出してすぐにこれを撮りましたので、まだ全然慣れていません。少し練習すれば、キー操作はもっとスムーズにいくでしょうが、指に伝わる感触がきつくて、私はこれ以上馴染めないような気がします。