「デジタル・ワビサビ」の可能性を求めて


↑EWI5000をMIDIコントローラーとしてSWAMエンジンのCelloで演奏した例

EWIという楽器は「電子サックス」と考えられがちですが、この楽器の可能性を考えると、サックスやクラリネットなど実際の楽器の代用としてではなく、まったく別の独立した楽器として考えないと面白くありません。
私がEWIでレコーディングした楽曲をサンプルとして紹介します。「音源サンプル」としてバラバラにしてあります。↓
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サンプル1 『My Endless Dream』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……EWI USBに付属してくるAria音源の中のViolin(TH)を使用。チェロに聞こえるのもチェロ音源ではなくViolin(TH)の低音部を使っています。Ariaの弦関連の音源ではViolin(TH)以外は薄っぺらで使う気になれません



サンプル2 『Stephen』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……Ariaのヴァイオリン音源での最初のアドリブソロの次に、EWI5000の01番音源をそのまま使ったSAX風アドリブソロを入れました。これがEWI5000の音です。サッパリ系というか、生音に似せた音作りのため、かえって使い方が難しいかもしれません



サンプル3 『Escape from Spring』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……アドリブソロ部分の最初。同じく16番を低いほうから上に向かって。続いて出てくるヴァイオリンのようなソロはAriaのヴァイオリン(TH)です



サンプル4 『Escape from Spring』(Jin Soda) その2(クリックでMP3再生)
……音源ソフトAriaのヴァイオリンで始まり、次にEWI4000Sの16番(Mix Lead)とユニゾン演奏



サンプル5 『Escape from Spring』(Jin Soda) その3(クリックでMP3再生)
……曲の最後の部分、EWI4000Sの16番とAriaのヴァイオリン音源でのアドリブの応酬。EWI5000の音はあっさり系?なので、Ariaのヴァイオリンと絡めると打ち消しあうというか、音が混じってしまって足の引っ張り合いになるのですが、4000Sの音は粘りがある分、Ariaのヴァイオリンと混ぜてもこの程度にはアンサンブルが作れます

サンプル6 『Another Christmas』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……曲の最後の部分、Ariaのヴァイオリン音源の中音域と低音域(チェロに見立てている)での絡み合い

サンプル7 『Autumn Leaves (dancing)』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……アドリブソロ部分。これもAriaのヴァイオリン音源(中低音域をメインに)とEWI4000S本体内蔵16番の掛け合い。5000が出た今でも、4000Sの内蔵音源の音はむしろ魅力を再認識させます

サンプル8 『REM』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……アドリブソロの最後からテーマに戻って終わるまで。これはAriaのTuba音源を使っています。Ariaのホーン系はしょぼい音が多くて使う気になれないのですが、このTubaはこんな使い方をするとなかなか味が出ますね。

サンプル9 『阿武隈のクリスマス』(Jin Soda) (クリックでMP3再生)
……これもAriaのViolin(TH)です。クラシック風の曲をクラシック風にまとめてみました。この音源はストレートに吹けばヴァイオリンそのものの音で、ちょっと聴いただけでは本物のヴァイオリンと区別がつかないほどなのですが、それだとつまらないので、やりすぎない程度にベンドをかけたりしてEWIっぽさを入れています。こういうクラシック調の曲だと、ベンドを多用すると違和感が増しますし、素直にやりすぎるとまさにヴァイオリンになってしまうので、加減が難しいところです。でも、その絶妙のバランスが「デジタルワビサビ」を生むと、私は考えています。


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EWIの音源の選び方、考え方



EWIというと、T-SQUAREを思い浮かべる人が多いようです。ウィンドシンセサイザーの歴史はリリコンから始まっており、あの音に憧れてEWIを始める人がかなりいます。
実際、WEB上でも「伊東たけしさんの音色完全コピー」とか「宮崎さんの音」といった音源や演奏動画がたくさん見つけられます。
T-SQUAREといえば伊東たけしのリリコン or EWIといったイメージが強いためか、伊東たけし氏が抜けた後も、後任で入ったサックス奏者、本田雅人氏、宮崎隆睦氏はEWIを使ってます。
でも、これはうがった見方かもしれませんが、彼らは本当にEWIが好きなのだろうかと疑問に思ったりもします。
宮崎氏がEWIについて「スクエアに入ることになって、この楽器を始めたけれど、最初は本当に戸惑った」といったことを語っている動画を見たことがあります。それは本音だろうなと思いました。
サックスを吹きこなせる人が、なぜわざわざEWIをやらなければいけないのか?? 私だったらやらないだろうと思うのです。
ホーンの音色で演奏したり、バリバリのアナログシンセサイザーの音でやるのであれば、本物の管楽器やキーボードシンセサイザーでいいはずです。フュージョン系のタイトなリズムセクションをバックにして音を立たせるためにはどうしてもバリバリ、キラキラの音色で目一杯吹きまくらなければならないわけで、ブレスによるコントロールや微妙な音色変化といったEWIならではの面白さ、魅力が出しづらいのではないでしょうか。

管楽器のシミュレーターとして使うなら本物の(生の)楽器を演奏したほうがいいじゃん……というのは、EWIをやっていくうちに必ずぶつかるジレンマです。
もちろん、自分はそれができないからEWIを使うわけですが、所詮玩具だろ、というレベルで終わるのは悔しいですし、追求していく意味が見つけにくくなります。
私もさんざん迷いましたが、Ariaのヴァイオリン音源で録音してみたとき、「いや、EWIでやる意味はある」と確信できるようになりました。

EWI4000Sの内蔵音源はよくできていますが、録音するとしょぼいです。これなら本物の管楽器を使ったほうがずっといいじゃん、という感じになります。
後継機種EWI5000は、さらにしょぼくなりました。これは開発者がEWIの本当の魅力を理解せず、単に「いかに生楽器の音をリアルにシミュレートするか」という視点で開発したからでしょう。似せれば似せるほど「本来の楽器の代用品」になってしまうということに気づいていません。
管楽器系の内蔵音色も、シミュレートがしょぼくて、EWI4000Sにあった独特のニュアンスや迫力が消えてしまいました。
ライブではまだいいのです。でかい音が出ますし、アンプから出てくる音を生で聴けば、それなりの息吹も感じられます。
でも、録音してしまうと途端に安っぽい、平板な印象になるのです。

しかし、EWI USBに付属してくるAriaのヴァイオリン音源をEWIで演奏すると、本物のヴァイオリンでは出ない、面白い表情が作れます。
私にとっては、サックスではスムースさ(なめらかさ)を出すのが難しいし、ヴァイオリンのような擦弦楽器では表現しきれない大振りなベンドや音の急速な上下の動きなど、EWIの得意とする奏法を追求していくことで、生楽器に負けない魅力が引き出せると感じています。これが私がめざしている「デジタル・ワビサビ」の目標です。

EWI-USBに付属するAria音源の画面
↑EWI USBに付属してくるAriaという音源ソフトの画面


そんなわけで、私がEWIという楽器に無意識のうちに期待していたのは、こんな雰囲気の(上のサンプルのような)↑ メロウでスムースな表現だということに、1年たって確信を持てるようになりました。
これをそれぞれ、サックスやクラリネット、ヴァイオリン、チェロだと思って聴いてはいけません。なんの先入観も持たず、ただ「音楽作品」として聴いてもらえるようになったとき、EWIによる音楽は初めて世に認知されたことになるのかな、と思います。
ちなみにAriaの音源は、今では64ビット版がWEB上から誰でもダウンロードできるようになりました。これにより、MacOSのCatalina以降でも問題なく録音可能です。

EWIと外部音源

EWI4000S、5000、SOLOは、音源が内蔵されていて、独立した楽器として使えることが最大の魅力です。カシオのデジタルホーンを例外として、従来のウィンドシンセサイザー(リリコンやYAMAHAのWX)は必ず本体とは別に外部音源が必要でした。それがいらなくなったということだけで、演奏する際の「気持ち」が軽くなるのですね。

トランスミッターを使ってワイヤレス化すれば、さらに自由度が高くなります。ステージから客席に降りていって演奏するなどということも可能です。
しかし、EWI吹きの人たちからはよく「EWI4000Sの音源は、以前のアナログ音源に比べると線が細い」といった声を聞きます。
そうなのかな、と思って、EWI3000mという2代目の音源を購入してみました。これは完全なアナログシンセサイザー音源です。しかし、シンセサイザー音源として考えれば確かにアナログ音源らしい味がありますが、私は今のところ、EWI4000Sに内蔵されているデジタル音源のすっきり感のほうがむしろ使いやすいかな、とも感じています。

いくつかの外部音源を試してみると、ますますEWI4000Sという楽器はよくできた「独立した楽器」なのだということが分かります。
いわゆるリリコン的なきらびやかで派手な音が好きな人は外部のアナログ音源を使うことを考えてもいいのでしょうが、自分としてはあの系統の(派手目のシンセっぽいギラギラの)音は好きではないので、ライブではほとんど内蔵16番をカスタマイズした音しか使っていません。1番もまあまあいいのですが、オーボエやソプラノサックスが好きな私としては16番がいちばん気に入っています。
エディットするとすれば、オクターブ下の音を重ねる割合をほとんど気づかれないくらい薄くして、オクターブキーで演奏したときの音を違和感なく太くするという程度でしょうか。
それ以上いじっていくと、どんどんアナログシンセサイザーっぽく(リリコンっぽく)なってしまって、私としては面白くありません。(もちろんこれは完全に好みの問題ですので、ご自分の好きな音色を追求してください)

一方、デジタルワビサビ路線はEWI4000Sの内蔵音源では難しいので、アナログシンセサイザー的なものとは別の外部音源に頼るしかなくなります。
EWI USB はまさにそれを形にしたものでしょう。私も、Ariaという音源ソフトを試したいために、EWI USBを後から購入してみました。
結論としては、Ariaはなかなか面白い音源です。
ただし、この音源ソフトは、サックスなどの本来EWIが得意としそうな管楽器系の音源が軒並みしょぼいのです。
これなら本物のほうがよほどいい。本物に負けてしまうなら、使っていても惨めになる……という感じなのですね。
例外は、上のサンプルで紹介しているヴァイオリン音源(TH)でした。
Violin(TH)は、ヴァイオリンのシミュレートとしてもなかなかのものなのですが、EWIなのですから、シミュレートという発想はある程度捨てないと辛くなります。むしろ、ヴァイオリンにはできない奏法、音色を引き出すくらいの気持ちでやったほうが、EWIの潜在能力が引き出せると思います。
あとはTubaやとフリューゲルホルン系統の音が面白いですね。なぜかホルンやトランペット、トロンボーンなどはちゃちで使う気がしません。
デジタルワビサビ
YAMAHAのWXをちょっと試したときに感じた違和感は、「外部の音源をMIDIで鳴らすための道具」という感触が強くて、ひとつの独立した楽器としての一体感を得られにくいことでした。
EWI4000Sや5000を完全なMIDIコントローラーとしてAria音源を鳴らす場合も同じことをやっているわけですが、Ariaは違和感なく使えます。


改めて思うのは、ウィンドシンセサイザーをMIDI入力機として使う場合の音源は、ウィンドシンセサイザー専用に作られた音源じゃないと厳しいということです。SampleTankやKontaktなどの弦楽器サンプリング音源でも試してみましたが、やはりブツブツと音が切れたり、不自然なベンドになったりしてうまくいきません。これらの一般音源はキーボードで入力することを前提としているからです。
キーボードでは、キータッチによって音が入力されますが、EWIでは、最初の音はキータッチからではなく、キータッチと息が一緒になって初めて音が出ますので、キーに触っているだけでは入力になりません。そのせいで、キーボード用の音源だと、最初の1音が出ないのですね。
ですから、録音などで一般の外部音源を併用するとしても、キーボードで入力して、後からコンピュータ上でボリュームカーブなどを細かく調整・修整していくという作業のほうがうまくいきます。
上のサンプルにはオーケストラ音源が薄く後ろに入っているものもありますが、これはキーボードで入力しています。EWIで入力すると強弱などがリアルに出るかな、と思ったのですが、そうでもありませんでした。むしろブレスやエクスプレッションなどの信号が過密になって、音がスムーズに出てくれない感じです。

残念ながらウィンドシンセサイザー専用の外部音源は、あまり製造されていません。YAMAHAではWX5用にVL70-mという外部音源(ハード音源)を出していましたが、これも製造中止になっていて、今では中古を探すしかありません。
ただ、私自身はVL70-mの音はいかにも「シンセサイザーの音」という感じがして、触手が伸びません。
ローランドのエアロフォンの内蔵音源も同じ系統の音だと感じます。

SWAMというエンジンを使ったチェロの音源はかなり使えます。このページのトップにある動画はSWAMエンジンのチェロ音源で録音しています。
しかし、同じシリーズのViolaはチャルメラみたいな音で、どうにも使う気がしませんでした。

リアルを追求するとどうしても生楽器に比較されてしまい貧乏くさく聞こえてしまいますし、かといってデジタルデジタルしたシンセ音でとんがるとリリコン風のメタリックな音に近づき、ワビサビ感が限りなく薄れてしまうので、そこがジレンマです。

長くなりましたが、結論は、

2021/03/09 updated

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とにかく手にしてみよう

EWI-SOLO


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